人気ブログランキング | 話題のタグを見る

もじゃもじゃペーター

もじゃもじゃペーター_c0069222_8522331.jpg「もじゃもじゃペーター」(ほるぷ出版)ハインリッヒ・ホフマン/作

『ごらんよ ここにいる このこを うへぇ! もじゃもじゃペーターだ! りょうての つめは1ねんも のびほうだい・・・・』 
「もじゃもじゃペーター」は、こんな言葉で始ります。
絵の中のペーターは、まさに「うへぇ!」って感じでしょ。
この子がこれから どうなるのかと思ったら 
『・・・・きたない もじゃもじゃペーターだ。』で、終わってしまう。
このお話しは ペーターを紹介しておしまい。

全部で10の短編が入っていますが、どれも単純明快で キッパリとわかりやすい。
優しい結末に慣れてきた 子ども達の期待を ことごとく裏切ってくれるので 衝撃を受けつつ 誰もがハマってしまう面白さなのです! 




*** More ***

このお話しが描かれたのは なんと1844年。今から161年も前の事です。
ドイツの精神科医のお父さんが3歳の息子の為に描いたのだそうです。
決して夢のある絵本ではないし、お話しの楽しさを伝える絵本でもない。
世の中何が正しくて何が間違っているのか、悪い事をすると どういう目に遭うのか、容赦なくズバッと目の前に叩き付けられます。

「わるぼうずフリードリッヒ」では、やりたい放題の悪坊主フリードリッヒが いじめた犬に噛まれて寝込んでしまい、その間に犬に自分のご馳走を食べられてしまうし、
「とてもかなしいひあそびのおはなし」では、猫が止めるのも聞かず、火遊びをししてしまう女の子バウリンヒェンは、火が燃え移って灰になってしまうし、
「まっくろになったこどもたちのおはなし」では、黒人の子を馬鹿にした子ども達が、セント・ニコラウス(これってサンタクロースよね)に、インク瓶に浸されて真っ黒にされてしまいます。

レモン(小5)と私の 1番のお気に入りは「ゆびしゃぶりこぞうのおはなし」
親指のゆびしゃぶりが なおらないコンラート少年。
お母さんは出掛ける前に「留守の間に、もしも指をしゃぶったら 仕立て屋さんが来て親指をちょん切ってしまうよ」と言い残して出かけてしまいます。
でも、お母さんが出かけた途端に 親指は口の中 
そしたら 本当に仕立て屋さんがやって来て なんと大きなハサミで 親指を チョキンと切ってしまったのです。
小さい頃 指しゃぶりが やめられなかったレモンが この絵本に出会ったのは それが治まってからでしたが、身に覚えがあるだけに 妙に気に入ってます。

どのお話しも、よく考えれば凄い内容なんだけど どこか 他人事のような淡々とした語り口がなんとも言えないおかしさを誘い 思わず笑ってしまいます。

この絵本については、色々な解釈があるようで、残酷な部分だけ取り上げて 面白がっている大人もいるし、子どもに見せる絵本ではないと言う人もいるようです。
これは昔話にも言える事ですが、「生きていく」という事に対して 貪欲だった 時代の中では なまぬるい平和主義的な 言葉でなく 善と悪の区別や 生きていく為に身につけなくてはならない事に対する 意識が今とは全然違っていたのだと思います。

日頃からたくさんの楽しい絵本に慣れ親しんでいる子になら、時にはこんな絵本も良いと思うんですけどね。  
ただ、子どもによってはトラウマになってしまいそうなので、幼い子には向かないかも。
子どもと楽しむなら、あまり深く考えずにカラッと読むのが良いと思います。
by Rupinasu_3 | 2005-07-06 10:14 | 絵本のこと話しましょ


<< 今日の文庫 1冊の絵本で >>