ロバのおうじ

c0069222_1644784.jpg〈ロバのおうじ〉グリム童話より
M.ジーン・クレイグ/再話  バーバラ・クーニー/絵  
もきかずこ/訳

ブログ再開と言いながら、つい さぼり癖が・・・いけませんねぇ (^_^;)
久々に絵本の話題。
大好き過ぎて 今までなかなかコメントできなかった絵本なんです。
絵がとってもきれいで、お話しは 読めば読む程心に染み込んでくるような素敵な絵本なのに、地味な背表紙とパッとしない表紙のせいか、読み聞かせるには長過ぎるせいか・・・哀しい事に 図書館でもほとんど読まれる事なく棚に置き去りにされているみたいなんです。

平和な国を治めている王様とお妃様は、なに不自由なく幸せに暮らしていましたが、たったひとつ願っても手に入らないものが子どもでした。
どうしても子どもがほしかった2人は、森に住む魔法使いに頼んで念願の子どもを授かる呪文をかけてもらうのですが、お礼の金貨が惜しくなって、偽物の金貨を混ぜて渡してしまいます。怒った魔法使いは子どもがロバの姿で生まれてくる呪文をかけるのでした。
この呪いを解くには、誰かがその姿形を気に留めずに心から愛してくれなくてはなりません。

ここまでは、よくある昔話ですよね。
そして、姿形を気に留めず心から愛してくれるのは 本来なら両親である王様とお妃様であるはずなんですが・・・



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せっかく授かった子どもがロバの姿で生まれてきてしまい、王様とお妃様は嘆き悲しみます。
「あの 灰色の毛! 嫌らしい耳! いったいどうすればいいんです? こんな こんな ロバ・・・・」

バーバラ・クーニーの描くロバの赤ちゃんは 何とも愛らしくて とても可愛いんです。
安心しきった寝顔でベッドですやすやと眠っています。 
その横で、母であるお妃様の口から出たこの言葉は あまりに残酷で胸に突き刺さります。
「どんな格好をしていようと こやつを王子として育てるのがわしらのつとめ」と言った王様でしたが、王子の教育は家来にまかせ、王子に会う事を避けていました。
ロバの王子は、王子がどうあらねばならないかを全て身につけ 心優しい子どもに成長し、両親の事を心から愛していたのですが、両親から愛を受ける事はありませんでした。
旅のリュート弾きから リュートを習った王子は、音楽の素晴らしさに目覚め自分で新しい曲を作る事もできるようになりました。
そして、とびきりの特別の歌を作った王子は、両親に聞いてもらおうと部屋を訪ねるのですが、お妃は新しいドレスに夢中、王様は財産を数える事に夢中で王子を見ようともしません。
とうとう、王子は自分が自分らしく生きられる場所を求めて旅に出るのでした。

我が子を正しく理解する事のできないこの両親を見る度に、なんて愚かな親なんだろうと 悲しさと怒りが込み上げてくるのですが、果たして私は自分の子をきちんと理解しているのだろうか・・・私を取り巻く様々な物事を見る時 見えるものだけに惑わされていないだろうか・・・と、考えてしまいます。
哀しい運命を背負いながらも誰かを恨む事もせず、旅を続ける王子の姿には感動せずにはいられません。

そして、旅の途中で立ち寄ったお城で 弾いたリュートと歌が気に入られ、そのお城でしばらく過ごすことになりました。
お城では小さい子どもと遊んであげたり、王様の計算を手伝ったりして、誰からも好かれ 楽しく過ごす事ができました。とりわけお姫様は 王子のリュートと歌が大層気に入っていたので、王子は 毎朝 とびきりの歌を作ってお姫様にプレゼントしました。そしていつしか王子はお姫様が好きになっていたのでした。
そんなある日、お姫様に他国の立派な王子3人から結婚の申し込みがあり、辛くなったロバの王子は城を去る決心をしました。
しかし、お姫様が選んだ結婚相手はなんとロバの王子でした。みっともない自分の姿を指して身を引こうとする王子に向かってお姫様は言います。
「あなたはみっともなくなんかないわ!あなたの歌と同じくらい美しいわ!あなたがなんだろうと気にするものですか!」

この言葉の後、王子はロバから りりしく美しい王子の姿に変わるのですが、驚く王子に向かって言った お姫様の言葉が なんとも素敵なんです。
「あなたは素敵だわ。でも そんな事なら 私 始めから知っていてよ。何故あなたが あんな 馬鹿げたロバの皮をかぶっていたのか不思議なくらいよ」

お姫様には、ちゃんと王子の本質が見えていたんですね。
見た目に惑わされて、王子の本質や心の奥を知ろうとしなかった愚かな両親に対して、目に見えるものに惑わされず、きちんと相手の心の奥を見る事ができた賢いお姫様。
そして、両親の受けた罰の為に背負わされた 悲しい運命と共に、前向きに立ち向かっていったロバの王子。
読む度に、主人公達の生き方が心に深く深く刻み込まれていきます。

この絵本は長女のいちご(小6)が2年生の頃に読んであげたのですが、当時とても気に入ってくれたので、何度も何度も読みました。
いちごが「この絵本が大好き」と言ってくれた事が嬉しくて、そういう意味でも私にとって大切な絵本となりました。
ちゃんと読むと20分以上かかるので、読み聞かせはちょっと辛いのですが 読む度に感動できる本です。
といっても、あまり深読みし過ぎると せっかくの素敵なお話しが台無しになってしまいますので、もしこれから初めて読まれる方は どうぞ 素直にそのままのお話しを楽しんで下さいね。
いちご(小6)も、最初は素敵なおとぎ話としての この絵本が大好きになり 6年生になった今、ようやくロバのおうじの 孤独や強さに気がつき 改めて好きなったようです。
私も、何度も何度も繰り返し読むうちに じわじわと色々な事に気持ちが向くようになりました。

c0069222_167291.jpgこのお話しは、元は〈グリム童話〉なので、グリムの原作も読んでみたのですが、原作は淡々とお話しが進んでしまって、この絵本程の感動は持てませんでした。
「グリムの昔話」の中に〈ちいさなロバ〉という題で出ています。
原作に忠実ではありませんが、 M.ジーン・クレイグの再話は素晴らしいと思います。
こんな素敵なお話しにしてくれてありがとう! って思います。
ロバをここまで愛らしく素敵に描いたバーバラ・クーニーの絵も素晴らしく、私の中では、文句なしにナンバ−ワン絵本なのです!!  
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by Rupinasu_3 | 2005-11-26 19:17 | 絵本のこと話しましょ


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