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ロバのシルベスターとまほうのこいし

c0069222_15181436.jpg(評論社)ウィリアム・スタイグ 作  瀬田貞次 訳
1970年 コルデコット賞 受賞作品
何度読んでも 名作だなぁって思う作品です。
結構文章が長いので、良い絵本だと聞いてはいても 手に取る機会がなかったある日
所属する絵本サークルで 読んでもらい すっかり気に入ってしまいました。

小石を集めるのが大好きなロバの子 シルベスターは、ある日 願いがかなう魔法の小石を手に入れ、偶然出会ったライオンから逃げるために 岩に変身する事を願います。
ところが、魔法は石を持って唱えないと効かない為に 岩のシルベスターは石を拾う事が出来ず 元に戻れなくなってしまいます。
助かる望みはただ一つ、誰かが石を拾って「隣りの岩よロバになれ」と願ってくれることでした。

かなり絶望的な状況です。いったいどうなってしまうのか 聞き手は不安になります。

一方、シルベスターの家では、父さんと母さんが いてもたってもいられないくらい心配していました。
この絵本の始まりのページは、シルベスターの家の中で 家族が幸せそうに過ごしている絵です。父さんはパイプをくわえて新聞を読み、母さんはほうきを持って掃除をし、シルベスターは集めた小石で遊んでいます。
家族がバラバラな事をしているのに、この一家がとても幸せそうに見えるのはなぜでしょうか。温かな色合いや穏やかな表情からでしょうか。
最初にこの絵を見ているおかげで、帰らないシルベスターを心配する父さん母さんの想いが、更に強く伝わってくるのかもしれません。
シルベスターが岩に変わってしまった事等知るはずもない二人は 諦めきれずに 同じ場所を何度も探し、同じ相手に何度も聞いて 探しまわります。
切ない場面が続きますが、主人公の一家がちょっととぼけた表情のロバな おかげで その気持ちが随分と和らぐ事も きっと作者スタイグの計算に入っているのでしょう。

そして、シルベスターの方は 望みが無い事を悟り 岩になりきってしまおうと 寝て過ごすようになります。
やがて、秋がきて冬が過ぎ春がきて・・・・奇跡が起こるのですが、その奇跡が起こるまでの夫婦やシルベスターの台詞が素晴らしいのです。。
ちょっと気を持たせるシーンなので、聞き手は シルベスターや両親になって 心から 奇跡を願わずにはいられません。
とにかく、絵が温かいので 悲観的な場面も暗くならず、 冬から春になった場面以降の絵は きっと 何か良い事が起こるという予感を、見る側に確信させてくれます。




* 読み聞かせで感じた事 *

絵本を子どもに読む時は、できるだけ 他の想いを入れずに お話しの世界を楽しんでほしい、一緒に楽しもう  という気持ちで読むようにしていますが、この絵本から こんな事を 感じ取ってくれたら嬉しいな なんて ちょっぴり期待しながら読む時もあります。 
この絵本を通して見えてくる、家族の絆。それは、私からの直接の言葉より 深く自然に心に届いているのかもしれません。

私は、この絵本を誰かに読んでもらう時には、自然とシルベスターの気持ちで聞いているのですが、自分の子どもに この絵本を読む時には つい  親の気持ちで読んでしまう事が多かったです。
でも、親の気持ちが入りすぎると 聞いている側は そのメッセージが重く感じられてしまうようなので、できるだけシルベスターの気持ちに沿ったイメージで読む方が良いとの事でした。

ところで、この大好きな絵本の中に どうしても 気になるところがあります。
最後にシルベスターが岩からロバに戻るシーンの 文と絵の進み具合が合ってないですよね。
シルベスターの岩を囲んで、ピクニックをする寂しげな両親、背中に小石がある事に気付かないシルベスター。
ここで、どうなるんだろう? とハラハラしながらページをめくると そこにはロバに戻ったシルベスターと喜ぶ両親の絵が描かれています。一目見て 元に戻ったんだ! と、わかる絵を見ながら、岩がシルベスターである事に気付かない両親の会話、ロバに戻りたいと真剣に願うシルベスターの様子が8行にわたって続くので 読んでもらっている方は 素直に喜ぶタイミングを逃してしまったような気持ちになってしまいます。

講師の先生に伺ってみたら、こういう場合は、絵に合わせて 一部の文を前ページに書き写してから読むのも良い という事だったので、以後その8行は前ページに移して読むようにしています。
読んだ事ある方なら、きっと同じ事を感じたのではないかと思いますが どうでしょう?
by Rupinasu_3 | 2005-05-12 22:11 | 絵本のこと話しましょ


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